本の紹介

あまりにも本を読まない私を鞭打ち励ますため、「本の紹介」を作ってみました。量を増やすために、以前気まぐれに付けていた「読書記録」から、めぼしい本を拾って水増ししてあります。コメントはあくまでも主観的なので、とうてい参考になるとは言えませんが、どうぞご覧ください。


ことば

  1. 『言語』(エドワード・サピア著/安藤貞雄訳、岩波文庫、1998)
    言語の多様性をさまざまな側面から説明し、その奥に普遍的な性質があることを解き明かしている。専門書とは思えない、読者をわくわくさせる面白さがある。なお、翻訳も明瞭で読みやすい。

  2. 『意味の世界』(池上嘉彦著、NHKブックス、1978)
    言語の意味の性質についてその概観を分かりやすく紹介。卑近で的確な例を用いて絶妙に料理している。意味論の入門書として優れた本だと思う。

  3. 『日本語はどういう言語か』(三浦つとむ著、季節社、1971)
    人間の認識のあり方から出発して日本語の構造について説いている。時枝誠記の言語過程説の影響を強く受けている。形態分析に言語形式よりも認識を優先させている点は、私には抵抗があった。

  4. 『日本語の表情』(板坂元著、講談社、1978)
    日本の文化の独自性が持つ問題点や良さなどを、豊富な資料をもとに論じている。日本人の立場と中立的な見方との調和が本書の魅力となっている。

  5. 『日本語練習帳』(大野晋著、岩波新書、1999)
    この本は、より効果的な意志疎通をはかることが目的で執筆されており、日本語の語感に鋭くなるための幾つかの“練習の手順”が述べられている。これは、単に技術としての日本語ブラッシュアップに終わらず、同時に、言葉の背後にある人間の営みをも考えさせてくれる。私の言語観が甘いことを痛感させられたが、こうすれば自分にもできるという希望も与えてくれた。

言語習得・外国語学習

  1. 『外国語をどう学んだか』(現代新書編集部編、講談社現代新書、1992)
    11の言語について34人の著名人が自分の身に付けた言語の習得体験談を記している。数々の重要な秘訣が宝石のように散りばめられていて、読みごたえがある。

  2. 『素読のすすめ』(安達忠夫著、講談社現代新書、1986)
    意味にこだわらず声に出してくり返し読むことによって、それが自分の血となり肉となることを説いている。素読の魅力を知らせるすばらしい本だ。

  3. 『右脳活用式バイリンガル教育』(七田真著、アルク、1995)
    言語の早期教育の必要性を説き、そのコツを具体的に示している。薄いが内容が充実している。

  4. 『蘭学事始』(杉田玄白著/緒方富雄校注、岩波文庫、1959,1977)
    当代一流の学者たちが、白紙に近い状態からオランダ語の解明に情熱を傾け、その後この学問が発展していった過程を描いている。事実に対して謙虚で探求心の旺盛なその姿に感動せずにはいられない。

  5. 『バイリンガリズム』(東照二著、講談社現代新書、2000)
    バイリンガリズムとは何か、バイリンガルになるにはどうしたらいいか、バイリンガル教育と社会の問題などについて扱っている。バイリンガリズムを通して言語と人間との複雑なかかわり合いが見えてくる。

知的活動

  1. 『発想法』(渡辺昇一著、講談社現代新書、1981)
    湧き出るアイデアを井戸に譬え、いかにすればネタを涸らさずに知的生活を続けられるかを説いている。秘訣は複数の井戸を掘り、たえず汲み続けることだという。内容が濃厚で読みごたえがある。

  2. 『論文のレトリック』(澤田昭夫著、講談社学術文庫、1983)
    よい論文とは、問いと答えが一貫しており、各章や節、文段がスムーズに流れ、主問、副問に対する答えが論理と証拠で十分に固められているもので、読みやすい文体を持つ。論文の書き方が初めて分かった。

  3. 『続・「超」整理法・時間編』(野口悠紀夫著、中公新書、1995)
    限られた時間の中でいかに効率的に仕事をこなしていくかを論じている。従来の時間管理法の盲点・限界を経済学の発想で大きく克服し、忙殺されている人々を救済してくれる。

  4. 『取材学』(加藤秀俊著、中公新書、1975)
    「取材」という語を広く「目的のために情報を得ること」と定義し、その具体的な方法を論じている。

  5. 『「知」のソフトウェア』(立花隆著、講談社現代新書、1984)
    情報のインプットとアウトプットについて、ジャーナリストとしての著者の体験と意見を述べる。学ぶことが多く、興味をそそる読み物である。「あとがき」が面白い。

  6. 『ぼくはこんな本を読んできた』(立花隆著、文芸春秋社、1995)
    立花隆の読書遍歴や読書法などに関する雑文を集めた本だが、人並み外れて旺盛な知識欲には非常に刺激される。後半100ページ以上にわたる著しい書評は面白いばかりか本のあり方を教えてくれる。

その他

  1. 『ソクラテスの弁明・クリトン』(プラトン著/久保勉訳、岩波文庫、1927)
    純粋に正義を慕い求め、正義のためには自分の命も惜しまないソクラテスの透徹した生き方を、ソクラテス自身に語り論じさせることによって描いている。

  2. 『日暮硯』(西尾実・林博校注、岩波文庫、1941)
    信州松代藩の家老恩田木工が藩の財政窮乏を救った経緯を聞き書きしたもの。木工の人並み外れた英知とリーダーシップは圧巻。ロジカルで知恵と人間理解にあふれた登場人物の言葉に引き込まれて一気に読んでしまった。

  3. 『信じることと、疑うこと』(なだいなだ著、径書房、1985)
    常識と呼ばれるものの中に潜むデマを掘り起こし、真実を求める態度を持つように呼びかけている。平易な文体に骨太の思想が、また読みたい気持ちにさせる。

  4. 『記憶のメカニズム』(高木貞敬著、岩波新書、1976)
    動物実験や脳の損傷のような臨床例などを手がかりに、記憶のメカニズムを解き明かしている。どの章も面白いが、特に最終章の「記憶をよくする方法」は、なまじの記憶術の本よりも役に立つと思う。

  5. 『時間 ─その哲学的考察─』(滝浦静雄著、岩波新書、1976)
    時間とは何かという問題を扱っている。時間の性質には、言語学風に言えば、どうやら“時制(「今」を唯一の存在とする)”と“アスペクト(前後関係)”の2つの側面があるらしい。そして、そのどちらが本質かという議論があって、それは未だ決着をみないのだそうだ。

  6. 『「わかる」とは何か』(長尾真著、岩波新書、2001)
    科学者の立場から、より確かな理解のためにとるべきプロセスのコツを教えてくれる。ただし、後半の3分の1から論点がぼやけ始め、最後には、東洋思想だと著者の言う仏教的な見解に道がそれたまま本書は終わっている。出版社とテーマを見て期待してしまった分、失望も大きかった。