「て」形の用法

 

目 次

1.発表原稿
2.ハンドアウト
3.レジュメ


 

1.発表原稿

 


 명지전문대尾崎します。「用法」という題で発表したいと思います。

 

 このテーマは、日韓対照研究で修士論文を書いたときに選んだものですが、そのとき、複文を作る「て」形の用法が殊の外広範囲で、その分類が難しいことを痛感しました。今回の発表では、対照研究をしやすいように「て」形の用法をなるべく明快に分類できる指針を試みることにしました。

 修士論文では、今回の発表と同じように、仁田(1995)の分類に大いに依存しましたが、仁田(1995)の研究の目的は、分類よりは、むしろ「て」形を体系的に説明することに重点を置いているようなので、実際の用例の分類には若干不便するところがありました。それで、修士論文を書くに当たって、仁田(1995)の体系に自分なりに手を加えて分類しましたが、それでもやはり不便だったので、今回もう少し分類しやすい方法を試みることにしました。

 なお、参考文献にある南不二男1993年の書名が間違っているので、訂正してください。『現代日本語の輪郭』ではなく、『現代日本語文法の輪郭』です。大変失礼いたしました。

 

 お手元のハンドアウトをご覧になると分かりますように、大まかな枠組みはレジュメと大体同じですが、「付帯状態」における分類を大幅に変更いたしました。特にここでは、動作自体が持続しているか、それとも動作の結果が持続しているかに重点を置き、仁田(1995)の表現を借りれば、「節的度合いの最も低くなったもの」(p.102)から順に、配列してみることにしました。

 

 そうしてみると、「副詞化したもの」と、「心的状態」のうち《心理作用》と《外的態度》が、動作の持続とも見えず、かといって、動作の結果が持続しているとも見えず、単に状態が主動作に付随しているというか、後件の動作に付随しているので、ハンドアウトの1の1のように、その特徴を表示してみました。たとえば、「より副詞化したもの」ですと、例文13番の「加藤は鼻の治療をきっかけに、それまで気に入ってなかった鼻の形を、思い切って整形手術で直すことに決めた」という文が、それに当たります。このような語句には、1語、または1語相当で形成されるものの他に、慣用句的になっているものがあります。たとえば、1語で形成されるものには、「あらためて」「まとまって」「だまって」「急いで」などがあり、慣用句的になっているものには「体力をふり絞って」「先を争って」などがあります(仁田:1995)。

 また、「心的状態」のうち《心理作用》ですと、レジュメにある例文5番の「ルートは慌てて私の助けを求めた」という文がそれに当たり、《外的態度》ですと、例文6番の「女はむっとしてうなだれると」という文がそれに当たります。《心理作用》を表す語句には他に、「興奮して」「呆然として」「感心して」「あわてて」などがあり、また《外的態度》を表す語句には「おどおどして」「むきになって」などがあります(仁田:1995)。

 

 また、それ以外の付帯状態は、節的度合いに違いを見出すことが難しかったので、どれだけ「継起」の用法に近いかで分けてみることにしました。そうすると、ハンドアウトの1の2の、動作の持続が付随している意味を表す用法は、ハンドアウトの1の3の、動作の結果が持続して付随している意味を表す用法よりも、継起の意味から離れていると思われ、2番目に配列することにしました。

 動作の持続が付随している意味を表す用法に含められるのは、「し手動作」全体と、仁田(1995)で「再帰・受動的動きそのものの存続」(p.100)と呼んでいる用法が含まれると思われます。たとえば、「し手動作」ですと、例文8番の「パンをぽろぽろこぼして給食を食べていた三雄」という文がそれに当たりますし、「再帰・受動的動きそのものの存続」ですと、例文11番の「こいつはむかし、祝福されて生まれてきた誰かの赤ん坊だったのだ」という文がそれに当たります。

 

 なお、レジュメの3の5に「分類しにくいもの」として、「強調を表すもの」を挙げ、例文34番に「打って打って打ちまくる」という作例を挙げましたが、これは、連続する動作が本動作とともに起こっているという特徴を見れば、動作の持続が付随している意味を表す用法に含めることができると思われます。

 ただ、これには難点が2つあります。第1に、前件の「打って打って」という語句が、付随しているというよりは、後件の動作と同一のものであるという点が問題です。また第2に、「打って打って」という表現が、連用修飾語を取らないという点も問題です。動作の持続が付随している意味を表す他の用法は、主語以外の名詞句を取ることができますが、強調の用法だけは、それができません。

 そのような難点はありますが、それでもこの用例の統語的な特徴は「付帯状態」であることを示していると見られるので、仮にここに入れてみたらどうかと考えてみました。

 

 次に、ハンドアウトの1の3をご覧ください。これは、動作の結果が主動作に付随している用法で、これは、付帯状態を表すとはいうものの、継起の意味が完全には消えていない用法と言えます。この用法が表す内容は多様で、「し手容態」のすべてと、「心的状態」のうち《表情動作》、それから「付属状況」のうち《再帰・受動的動作の存続》と《そのときの状況》とがそれに含まれます。

 例文10番は、レジュメでは例文11番と一緒に《再帰・受動的動作の存続》に含めていますが、11番は動作の持続を表す用法で、10番の「が、その度に王虫の群れが怒りに狂い、地を埋め尽くす大波となって押し寄せてきた」という文は、仁田(1995)で「姿勢変化ではないものの、動詞が主体の様態変化を表し、変化後の状態維持が取り上げられており、一段と <し手容態> に近い」(p.101)と指摘している用法に属します。なお、この例文10番のような用法は、《再帰・受動的動作の存続》というよりは、《様態変化》と言った方がいいかもしれません。

 また、ハンドアウトで1の3に含めた《そのときの状況》というのは、レジュメにある例文12番の「見張り台だけ雲から出して、追跡する」という文のように、主体自体の変化ではなく、主体を取り巻く環境を主体が変化させた結果が、主動作に付随することを表しています。ですからこれは、《そのときの状況》と呼ぶよりは、《環境変化》と言った方がいいかもしれません。この用法に含める用例には、仁田(1995)を見ると、主体から少しずれたものから、主体周辺の環境まで、変化の対象はさまざまです。たとえば、「自分の正体をかくして(ホテルに滞在した)」とか、「ズボンと靴をびしょびしょにして(彼は立ち上がった)」とか、「電燈をつけて(息子が眠っていた)」のような用例が挙げられています。

 

 ところで、「し手容態」には、仁田(1995)では、《姿勢》《着脱》《携帯》の3つの用法だけが指摘されていました。たとえば、《姿勢》の用法は、レジュメにある例文1番の「海岸のほぼど真ん中にどっかりと座って、海を眺め始めた」という文のようなもので、《着脱》は例文2番の「駒子はコオトに白い襟巻きをして、駅まで見送って来た」、それから、《携帯》は例文3番の「わたし、雫のお弁当を持って走り回ってたのよぉ」のような文です。

 しかし、例文4番のように「僕は牛乳パックに口をつけて、ごくごくと牛乳を飲んだあと、〜」のような用例がたくさん出てきました。これは、口が牛乳パックに接触はしていても、姿勢が変化しているわけではないし、かといって着たり脱いだりというのとも違います。レジュメでは「付随する動作を表す動詞」と書いていますが、もう少しその特徴を分かりやすく言えば、《接触》と言うことができると思います。

 

 それからもう一つ、ハンドアウトの1の3にある「し手容態」に含められる用法には、レジュメで「心的状態」に含まれている《表情動作》が含められます。《表情動作》を「心的状態」から切り離して「し手容態」に移すのは、感情を表す用法の一つを切り離してしまうという点で、不都合があるとは思われますが、動作の結果が付随するということで、「し手容態」に含めることにしました。たとえば、レジュメの例文7番の「オヤジが渋い顔をして、腕組みをしながらテーブルに座っていた」という文が、それに当たります。仁田(1995)の用例には、他に「血相変えて」とか、「沈痛な表情を顔に浮かべて」とか、「けげんな顔をして」(以上、p.98)というような語句が指摘されています。

 

 次に、2の1以下の分類ですが、ハンドアウトの内容は基本的にはレジュメと同じです。ただし、「時間的継起」と「起因的継起」を、一つの「継起」としてまとめてみました。2の1の「順次的継起」と、2の2の「限定的継起」は、両方ともレジュメの3の2で「時間的継起」としているものです。また、ハンドアウトにある2の3の「起因的継起」は、レジュメの3の3で「起因的継起」としているものです。

 この「順次的」と「限定的」という表現は、韓国語の研究で、「하고」と「해서」の用法について研究したものから借用しました。具体的には、韓国外大の언어와 언어학8集に収められている、서정수教授の연결어미 {-} {-어서}に拠っています。「順次的」というのは、前件の動作が後件の動作に何ら限定を加えないもので、「限定的」というのは、前件の動作が後件の動作に、場を提供したり、前提となったりして、何らかの限定を加えるものを言います。

 仁田(1995)では、その区別は取らず、前後関係が必然的でないものと、必ずその前後関係でなければならないものとに分けています。たとえば、前後関係が必然的でないものには、「私は思わず、ペンを捨てて立ち上がった」とか、「李先生は、気が向けば台所へ入って包丁をふるう」などのような例があり、必ずその前後関係でなければならないものには、たとえば、「信虎が、駿河をとびだして都へのぼった〜」というような例が挙げられています。

 しかし、そのために、前後関係が必然的でない用法の例を見ると、順次的であったり、限定的であったりしています。たとえば、「私は思わず、ペンを捨てて立ち上がった」という例は、順次的で、「李先生は、気が向けば台所へ入って包丁をふるう」という例は、限定的です。一方、必ずその前後関係でなければならない用法を見ると、すべて限定的なものになっています。韓国語との対照研究を念頭に置いたとき、前後関係が必然かどうかということよりも、前後関係が順次的か限定的かという観点の方が有用であると判断し、このような分類をすることにしました。

 ただし、頻度で言えば、「順次的継起」は「限定的継起」に比べてあまり多くなく、修士論文を書くときに集めた用例では、32件対133件の比率で現われていました。これは、大まかに見れば、1対4ぐらいの比率になります。次の「起因的継起」が205件あったことを考えると、継起の用法全体でこの「順次的継起」が占める割合は、9パーセント弱ということになります。また、レジュメを見ると分かるように、「時間的継起」のうち、「順次的継起」以外の用法はすべて、「限定的継起」に含まれると見られます。

 

 次に、ハンドアウトの2の3に含めた「起因的継起」ですが、これは、頻度が高い分、多くの用法を含んでいます。仁田(1995)では、これを中心的な用法と周辺的な用法とに分けていますが、これに大きな手を加える必要はあまりないと思われます。

 ただし、仁田(1995)では《原因》と《理由》とを分け、《原因》は後件に無意志動詞が用いられ、《理由》は後件に意志動詞が用いられるものとしています。これが日韓対照研究においてどれくらい有用な分類かは、もう少しよく調べる必要がありそうですが、修士論文を書きながら用例を分類したところ、《原因》よりも《理由》の方が、「해서」の頻度が高かったので(오자키2006, p.144)、もしかしたら、この分類には何らかの意義があるのではないかと考えられます。

 

 次に、ハンドアウトの3番目にある「並列」について、見てみたいと思います。仁田(1995)では、「並列」を細分することはせず、いくつかの用例とともに、「並列」の統語的特徴を記述するにとどまっています。しかし、多くの字書類では、「並列」に含まれる用例に、《羅列》と《対比》とがあります。

 レジュメでは触れていませんが、《逆接》は《対比》の一種だと思われます。たとえば、「木を見て森を見ない」などというような文は、木を見ることと、森を見ないこととを対比させています。

 なお、並列の用法の中には、《前提》を表すものがあり、それがかなりの頻度となっていました。レジュメにある例文33番の「縁側から二軒と離れていない、青草原のあいだを水量たっぷりの小川がゆるゆる流れていて、その小川に沿った細い道を自転車で通る牛乳配達の青年が、毎朝きまって、おはようございます、と旅の私に挨拶した」という文が、その例ですが、《前提》とは、前件が、後件の事象が存在する場所であったり、時間であったり、何らかの前提であったりするものです。その表現の多くは、後件に「その」とか「それを」などの語句があり、それが前件の内容を含めてしまうことによって、全く対等とはいえない「並列」の意味を表しています。

 

 以上のように、ハンドアウトでは、レジュメの内容を変更して、「付帯状態」と「継起」と「並列」の3つに分けて、「て」形の用法を考えてみました。それぞれの下位分類は、全く別々の基準で行うことになりました。「付帯状態」では、「動作性」と「結果性」、「継起」では、「限定」と「起因」、「並列」では、「対比」と「前提」の有無で下位分類しました。

 

 以上で、「て」形の用法についての発表を終わります。

 

2007年9月29日発表


2.ハンドアウト

 

1.付帯状態

 1−1.〔−動作性〕〔−結果性〕

  「副詞化したもの」「心的状態(《心理作用》《外的態度》)」

 1−2.〔+動作性〕〔−結果性〕

  「し手動作」「付属状況(《再帰・受動的動きそのものの存続》)」

 1−3.〔−動作性〕〔+結果性〕

  「し手容態《姿勢》《着脱》《携帯》《付随する動作を表す動詞→接触》」「心的状態(《表情動作→表情》)」「付属状況(《再帰・受動的動作の存続→様態変化》と《そのときの状況→環境変化》)」

 

2.継起

 2−1.〔−限定〕〔−起因〕

  「順次的継起」

 2−2.〔+限定〕〔−起因〕

  「限定的継起」

 2−3.〔+限定〕〔+起因〕

  「起因的継起」

 

3.並列

 3−1.〔−対比〕〔−前提〕

  「羅列」

 3−2.〔+対比〕〔−前提〕

  「対比」

 3−3.〔−対比〕〔+前提〕

  「前提」

 

 

参考文献(補遺):

서정수1982)「연결어미 {-} {-어서}」『언어와 언어학8, 한국외국어대학교

 


3.レジュメ

 

「て」形の用法

 

 

尾崎達治(明知専門大学)

 

1.研究の目的・範囲

 本研究の目的は、動詞とイ形容詞の「て」形が複文に用いられるときの用法を、なるべく体系的で、なるべく辞書のようにはっきりした区分を付けることにある。そのわけは、日韓対照研究において「て」形の用法を韓国語と対照させるとき、なるべく明確に用法を分類する必要があるからである。

 研究の範囲は、「副詞節」と「並列節」つまり、複文をなすものの用法に限った。また、次のものは扱わない。1)「ている」「てある」「ておく」など、補助動詞に接続するもの、2)「によって」「に対して」「に関して」「について」「にとって」「として」「をもって」など、格助詞の機能をするもの、3)「はじめて」「決して」など、そのままの意味で原型に復元することが困難なもの、4)「てから」「ては」「ても」「てか」「ての」など、他の助詞が付いたもの。

 

2.先行研究

 三上(1953,1955)では、述語の階層を「単式」「軟式」「硬式」「ユウ式」の4段階に分けている。その後、南(1974,1993)では、述語の階層をA類からD類までの4段階に分けている。両者の研究方法は互いに異なっているが、両方とも4段階に分かれており、それぞれが含む範囲はほぼ一致している。

 このような述語の階層を踏まえた「て形」の研究として、言語学研究会(1989)および仁田(1995)がある[1]。なかでも仁田(1995)は、南(1974,1993)を受けて、体系的な記述を行っている。本稿では、仁田(1995)の体系にのっとって、用法の分類を試みた。

 

3.用法分類

 仁田(1995)では、南(1974)の分類を受け、テ1を《付帯状態》、テ2を《時間的継起》、テ3を《起因的継起》、テ4を《並列》と呼んでいる。本稿では、これらの名称とともに、下位分類に用いられる名称についても、仁田(1995)に言及があるものは、それを用いることにする。

 3−1.付帯状態

 テ1に該当し「副詞節」をなす。従属度は高い。本稿では、仁田(1995)の分類には従わず、《動作性》と《結果性》の有無に重点を置いて再分類してみることにした。《動作性》というのは、「ながら」で言い換えることのできるもので、持続的動作が同時進行することを表す。一方《結果性》は、動作によって生じた変化の結果が持続することを表す。これらの性質のうち、両方とも欠けているものは副詞にいちばん近く、次に動作性のあるものが続き、そして結果性のあるものは、《継起》の用法に重なる特徴を持ってくる。ここでは試みに、動作性と結果性の有無によって再分類し、大きく《状態の付随》《動作の付随》《結果の付随》に分類することにする。

  3−1−1.「状態の付随」

   3−1−1−1.「より副詞化したもの」

 ほとんど節をなさず、文(節)的度合いが最も低い用法である[2]

 1) 加藤は鼻の治療をきっかけに、それまで気に入ってなかった鼻の形を、思い切って整形手術で直すことに決めた。(GO)

 このような語句には、「あらためて」「まとまって」「だまって」「急いで」など、1語(相当)で形成されるものの他に、「体力をふり絞って」「先を争って」など、慣用句的になっているものとがある。

  3−1−1−2.「心的状態」

 これも《より副詞化したもの》に近く、状態を表す。この用法が《より副詞化したもの》と違う点は、「〜た様子で」などで言い換えることができることである[3]。《心理作用》《外的態度》の2種類が含まれる[4]

 2) ルートは慌てて私の助けを求めた。(博士の愛した数式)

 3) 女はむっとしてうなだれると、〜。(雪国)

 例文2は《心理作用》である。このような語句には、「興奮して」「呆然として」「感心して」「あわてて」などがある。例文3は《外的態度》で、このような語句には、「おどおどして」「むきになって」などがある。

  3−1−2.「動作の付随」

 後件の動作と同時に前件の動作が持続することを表す。この用法は、「〜ながら」で言い換えることができる。

   3−1−2−1.「し手動作」

 仁田(1995)ではこの用法をそれ以上細かく分けていないが、多くの辞書類で《方法》としている用法をこの中に含めることができる。

 4) パンをぽろぽろこぼして給食を食べていた三雄。(일본어저널 2005.3)

 5) 〜、博士に教えられた通り、声に出して読んでみた。(博士の愛した数式)

 例文4で、パンをぽろぽろこぼすのは、食べる行為に付随しているのであって、食べる行為自体を別の側面から描写しているわけではない。一方、例文5では、声に出すのは読むという行為自体の一側面を描写している。これを言語学研究会(1989)では、「第二なかどめの動詞が、定型動詞によってさしだされる動作の側面をとらえていて、そうすることで、その動作のあり方、様態を特徴づけているばあい」(p.29)と表現している。この例文5の用法は、例文4の用法から分離することができる。例文4の用法は《方法》とは言いがたいので、かりに《付随動作》と呼ぶことにする。《し手動作》はこのように、《付随動作》と《方法》とに分けることができると考えられる。

   3−1−−2.「強調」

 6) 打って打って打ちまくる。

 この用法を《動作性》に重点を置いてここに含めたが、これには難点がないとはいえない。それは、前件の動作が後件の動作と同一のものだという点である。後件に付随する動作でもなく、後件の動作の別の側面でもない。また、修飾語を一切取らないという点では、副詞化した用法にも似ている。しかし、この用法は動作性を持っているので、仮にここに含めた。

   3−1−2−3.「再帰・受動的動きそのものの存続」

 7) こいつはむかし、祝福されて生まれてきた誰かの赤ん坊だったのだ。(GO)

 この用法は、前件が主体の《動作》ではなく、むしろ《経験》とでもいうようなものである。仁田(1995)では、「月光を浴びて家へと帰ってくる」「前身を朱に染めて倒れていた」「泥にまみれてどこかでじっとしていることだろう」という例が挙げられているように、これらは主体の行動ではなく、主体が受動的に経験している動作の持続を表している。

  3−1−3.「結果の付随」

 動作の結果が存続することを表す。《し手容態》と《付属状況》を含める。

   3−1−3−1.「し手容態」

 《姿勢》《着脱》《携帯》《接触》《表情》の用法を含める。

 8) 海岸のほぼど真ん中にどっかりと座って、海を眺め始めた。(GO)

 9) 駒子はコオトに白い襟巻きをして、駅まで見送って来た。(雪国)

 10) わたし、雫のお弁当を持って走り回ってたのよぉ。(耳をすませば)

 11) 僕は牛乳パックに口をつけて、ごくごくと牛乳を飲んだあと、〜。GO

 12) オヤジが渋い顔をして、腕組みをしながらテーブルに座っていた。(GO)

 上の例のうち、11の《接触》は仁田(1995)では指摘されていない。《姿勢》に似ているが、これは姿勢よりは、何が何に接触しているかに重点を置いているので、分けてここに含めることにした。この用法に含まれる述語句には、「鼻につけて」「口を当てて」「肩につかまって」「肩を摑んで」「顔を両手で押さえて」「新聞を片手でしっかり押さえつけて」などがある。

   3−1−3−2.「付属状況」

 付属状況は、仁田(1995)の用語だが、ここでは意味を狭めて使うことにする。そこに含める用法を、仮に《様態変化[5]》と《環境変化と呼ぶことにする。

 13) が、その度に王虫の群れが怒りに狂い、地を埋め尽くす大波となって押し寄せてきた。(風の谷のナウシカ)

 14) 見張り台だけ雲から出して、追跡する。(天空の城ラピュタ)

 上の例文13は《様態変化》であるが、これは、「輪になって」「先に立って」のように、主体に全体的な変化があった結果が持続していることを表している[6]。一方、例文14は仮に《環境変化》と名づけたもので、これは主体の様態的なあり方とはいえない。この用例の前件に用いられる語句は、「自分の正体をかくして」「ズボンと靴をびしょびしょにして」「電燈をつけて」のように、主体から少しずれたものから主体周辺の環境まで、変化の対象はさまざまである。

 

 3−2.時間的継起

 テ2に該当し「副詞節」をなす。従属度は中間。時間的に先行することを表す。起因を表さない。継起の関係を、順次的なものと限定的なものとに分けることができると思われる。

  3−2−1.「順次的継起」

 前件の動作が後件の動作を限定しないもの。

 14) 葉子は窓をしめて、赤らんだ顔に両手をあてた。(雪国)

  3−2−2.「限定的継起」

 前件の動作が後件の動作の場となったり、前提となったりするもの。単なる継起を表すものの他に、継起の関係が反復するものや、時間状況を表すもの、到達を表すもの、「状況付けられた生起時」(仁田:1995)、到達・中断を表すもの、起因的継起との繫がり・移行を表す「契機」(仁田:1995)がある。

 15) あなたが呼んで直接話してご覧になるといいわ。(雪国)

 16) それでも彼は時を刻むごとにああして現われて、王女を待ち続けるんだ。(耳をすませば)

 17) それから何分か経って、オヤジは、もっときれいな海の方がよかったんだけどな、と独り言のようにつぶやいたあと、視線を僕に向け、ジッと見つめた。(GO)

 18) お茶を飲んでいて、後から殴られた。(仁田:1995)

 19) フロア受付の前を通り過ぎ、長い廊下を歩いて、部屋のドアの前に立った。(GO)

 20) とうとう芸者に出たのであろうかと、その裾を見てはっとしたけれども、〜。(雪国)

 

 3−3.起因的継起

 テ3に該当し「副詞節」をなす。従属度は中間。起因の意味を含む。継起の関係はすべて限定的であると思われる。状態性述語が来うるという点が特徴である。

  3−3−1.中心的な用法

「原因」「理由」の他に、それらが反復するものがある。

 21) ユパ様、これ運んでくださる? 気流が乱れてうまく飛べないの。(風の谷のナウシカ)

 22) 作業が終わると、ぼくは先生に呼ばれて屋根裏にあるアトリエに行った。(冷静と情熱のあいだ Blu)

 23) 悪ガキだった僕は、何度か警察に捕まるような悪さをして、オヤジから三回ほど半殺しの目に遭わされていた。(GO)

  3−3−2.周辺的な用法

 仁田(1995)によると、「目的的起因」「方法的起因」「条件」「逆条件」「判断の理由・根拠」が、起因的継起の周辺としてここに含められる。

 24) うちへ寄っていただこうと思って、走って来たんですわ。(雪国)

 25) 道場破りよろしく、僕を倒してそれを手にすれば、仲間にいい顔ができる。(GO)

 26) アパートから歩いて五分ほどのヴェッキオ橋の傍に工房がある。(冷静と情熱のあいだ Blu)

 27) 情けないじゃないか。さんざん苦労してこれっぱかしさ。(天空の城ラピュタ)

 28) 網棚ノ荷物ガガタガタ揺レテ落チソウダ。(仁田:1995)

 上の例のうち28番は「判断の理由・根拠」だが、これは、評価・予想・判断を表すものと、気分・感覚を表すもの、感謝・謝罪を表すものに分けられると思われる。なお、28番は29番と同じく評価・予想・判断を表すものに含められる。

 29) 京都の古い家は、入口が狭いのに奥が深くて、まるでうなぎの寝床だ。(일본어저널 2005.3)

 30) わたし、怖くてたまらないの。(天空の城ラピュタ)

 31) あたし、泣きごとばかりいってごめんね。(耳をすませば)

 

 3−4.並列

 テ4に該当し「並列節」をなす。従属度は低い。時間的に先行することを表さない。仁田(1995)では下位分類をしていないので、ここでは、辞書類や言語学(1989)を参考に、羅列を表すものと、対比を表すもの、それから前提を表すものとに分けてみた。対比を表すもの以外は、述語に状態性の用言が用いられ、動詞には「〜ていて」が付け加えられるが、「〜ていて」は省略されることもある。

 31a) 海は広くて大きいのだった。(GO)

  b) 分厚くて重い木製のドアを開けると、〜(GO)

 32) 〜なのに頬はこけて、目鼻立ちも凛々しく、〜(冷静と情熱のあいだ Blu)

 33) 〜、縁側から二軒と離れていない、青草原のあいだを水量たっぷりの小川がゆるゆる流れていて、その小川に沿った細い道を自転車で通る牛乳配達の青年が、毎朝きまって、おはようございます、と旅の私に挨拶した。(太宰治「満願」)

 並列の用法は、南(1974)によるとC類に分類され、原則として連体修飾語の一部になることができないとされている(p.127)。しかし、羅列を表す用法では、31bのように連体修飾語の一部になることができる。

 

 3−5.分類しにくいもの

 なお、上記の分類に入れにくい用法もいくつかある。強調を表すもの、時点を表すもの、後件が補助動詞のようになっているもの、婉曲に文を切るものなどがある。

 35) 席について三分後には、テーブルには誰もいなくなった。(GO)

 36) しかしほんとうに透明かどうかは、顔の裏を流れてやまぬ夕景色が顔の表を通るかのように錯覚されて、見極めるときがつかめないのだった。(雪国)

 37) そしたらさ、原田のやつ急に泣き出して。なあ、おれ、何か悪いこと言ったかな。(耳をすませば)

 

4.参考文献

言語学研究会・構文論グループ(1989)「なかどめ―動詞の第二なかどめの場合―」『ことばの科学』2号、むぎ書房

仁田義雄(1995)「シテ形接続をめぐって」仁田義雄編『複文の研究(上)』くろしお出版

益岡隆志・田窪行則(1992)『基礎日本語文法』くろしお出版

益岡隆志(1997)『複文』くろしお出版

三上章(1953)『現代語法序説』刀江書房(1972年にくろしお出版から復刊)

―――(1955)『現代語法新説』(1972年にくろしお出版から復刊)

南不二男(1974)『現代日本語の構造』大修館書店

――――(1993)『現代日本語文法の輪郭』大修館書店

오자키 다쓰지(2006)접속조사 한국어 연결어미 대조 연구연세대학교 석사논문


 

[1] 言語学研究会1989)では、述語の階層を踏まえているという記述はないが、用法の配列を見ると、従属度の高いものから低いものへという順で記述されている。

[2] 仁田(1995:102-103)。語句の例もここから引用した。

[3] 仁田(1995:97)。語句の例の一部もここから引用した。

[4] 仁田(1995)では、もう一つ「表情動作」をここに入れているが、本稿ではこの用法の《結果性》を重視し、仮に「表情」という名で「し手容態」に入れることにした。

[5] 《様態変化》は仁田(1995)では《付属状況》に含められているものである。仮に《様態変化》と名づけたが、これは仁田(1995)の「姿勢変化ではないものの、動詞が主体の様態変化を表し、変化後の状態維持が取り上げられており、一段と <し手容態> に近い」(p.101)としているところから取った。

[6] 《様態変化》と《環境変化》の語句例は、仁田(1995)から引用した。