働く (2007年10月2日火曜日)


お金を増やすには、お金を増やす基本原則について学び、そして、お金を貯める要領も学ぶ必要があります。しかし、それだけでは、投資を始めることはできません。 手持ちがありませんから。投資のプロは、手持ちのお金がなくても大きな利益を得るそうですが、私にはそんな技能も知識もありません。では、どうしたらいいでしょうか。

その答えは、働くことです。邱永漢氏も株を始めるとき、まず一生懸命原稿を書いて得た収入で株を買っています。

…私は一所懸命原稿を書いてすぐ二百万円の金をつくったが、…(中略)…、その金を元手にして株をやることを思い立ったのである。
(邱永漢『私の金儲け自伝』日本経済新聞社、1982。p.81)

このように、働くことなしには、なかなかお金は手に入りません。一生懸命働いて、収入を増やすことを心がける必要があります。

では、働くときにはどんな点が大切でしょうか。いろいろな考え方ができると思いますが、とりあえず、「とにかく働き始めること」、「付加価値を生み出すこと」と、「自分の好きなことをすること」 と、「学ぶこと」の4つの点をあげ、それについて、少し考えてみたいと思います。

第一に、「とにかく働き始めること」ですが、これはいちばん大切なことです。いま働いていない人は、仕事を見つけることが大切です。アルバイトをしたことのない学生は、勇気を出してアルバイトを始めてみたらどうでしょうか。親からお小遣いをもらうのでなく、自分で働いて得たお金で貯蓄をするのです。アルバイトには、お金を得る楽しさだけでなく、社会のことを知る楽しさもあります。

現在働いている人も、生活費で手一杯ならば、副収入を得る方法を考えるべきです。 この点に関し、本多静六博士も「本職に差し支えない限り、否本職のたしになり、勉強になる事柄を選んで、本職以外のアルバイトにつとめることである」(本多静六『私の財産告白』p.44)といっています。たとえば、著書を出してその印税または原稿料で貯蓄するという方法も考えられます。印税で左団扇というわけにはいきませんが、図書代を稼ぐくらいのお金にはなります。

第二に、「付加価値を生み出すこと」(ザビエル『お金の聖書』p.81)という考えですが、それに関して、重要だと思われる考えが一つあります。それは、自分を“企業 家”と考えることです。これは、コン・ビョンホ(공병호)という人が提唱している「1인 기업가(一人企業家)」という考え方で、自分の勤める会社を自分が契約を結んでいる“取引先”または“顧客”と考えるのです공병호부자의 생각 빈자의 생각』p.154)

自分という企業を家族のように助けてくれる取引先は、まずいません。ですから、自分の仕事のコンテンツを開発して、たえず顧客の満足度を高めていこうと努力することが大切です。そういう脈絡から、自分自身を一人の企業家と見る発想は、とても有益なものです。働いている人は、誰でも企業家なのです。

私の考えでは、自分の仕事に関連する内容で、その効率を高めるためにありとあらゆる創意工夫をし、それを本にして出版することは、たとえ売れる本にはならなかったとしても、自分の仕事に付加価値を与え、サラリーをアップさせたり転職に有利になったりするにちがいないと思います。何冊ものベストセラーを企画した、ソン・スッキ(송숙희)という編集者は、『당신의 책을 가져라(あなたの著書を持て)』という本の中で、職業作家でない一般人が自分の本を持つことはキャリアアップのために非常に役立つことであると力説しています。

第三に、「自分の好きなことをする」という ことですが、これは一見常識に反することなので、十分注目する必要があります。実は、けっこう多くの人たちが、自分の好きなことをすべきだという忠告をしているのです。たとえば、邱永漢氏は、次のように言っています。

どうせやるなら、自分の好きな仕事を選ぶに限ります。自分の好きな仕事なら、寝食を忘れて働くことができますし、たとえ苦労が多くても満足感が得られます。人生は心の満足が何より大切ですから、そういう角度から職業を選ぶ必要があります。
(邱永漢『生き方の原則』知恵の森文庫。p.149)

本田健氏も同じようなことを主張しています。

幸せな小金持ちになっていく人は、ある意味で「自分に甘い人」です。自分のやりたいことをやらせてあげ、嫌いなことをさせないようにしています。その結果、好きなことをやるときに躊躇しません。楽しいからすぐやるのです。逆に、イヤなことは、すぐにやめます。
(本田健『幸せな小金持ちへの8つのステップ』サンマーク文庫。p.101)

また、100年前に出て最近また脚光を浴びている、“The Science of Getting Rich”という本でも、次のように、そっくり同じことを指摘しています。

やりたいことをやってみるのが人生です気の進まないことばかりさせられてやりたいことができないならば心から生きる喜びを感じることはできませんそれにやりたいことならかならずできるはずですやりたいと思う気持ちはそれができるという証なのです
(ウォレス D.ワトルズ著 / 宇治田郁江訳『富を手にする「ただひとつ」の法則』フォレスト出版。p.130)

原文:Doing what you want to do is life; and there is no real satisfaction in living if we are compelled to be forever doing something which we do not like to do, and can never do what we want to do. And it is certain that you can do what you want to do; the desire to do it is proof that you have within you the power which can do it.

ですから、好きでもないのに、お金になりそうだからといって、その仕事に飛びつくのでなく、自分がいちばんやりたいことは何なのかということをまず考え、それで仕事ができるように努力すべきです。そのことに時間を費やすのは、重要なことだと思います。

このことを、本多静六博士は「職業の道楽化」という言葉で表現しています。少し長くなりますが、引用してみましょう。

私の体験によれば前にもしばしば述べたように、人生の最大幸福は職業の道楽化にある。富も、名誉も、美衣美食も、職業道楽の愉快さには比すべくもない。道楽化をいい換えて、芸術化、趣味化、娯楽化、遊戯化、スポーツ化、もしくは享楽化等々、それはなんと呼んでもよろしい。すべての人が、おのおのその職業、その仕事に、全身全力を打ち込んでかかり、日々のつとめが面白くてたまらぬというところまでくれば、それが立派な職業の道楽化である。いわゆる三昧境である。そうしてこの職業の道楽化は、職業の道楽かそれ自体において充分酬われるばかりでなく、多くの場合、その仕事の粕として、金も、名誉も、地位も、生活も、知らず識らずのうちにめぐまれてくる結果となるのだから有難い。
(本多静六『私の財産告白』実業之日本社。p.186〜187)

第四に、「学ぶこと」ですが、これは将来の自分自身への投資となります。たとえば、ロバート・キヨサキ氏は“Rich Dad Poor Dad”の中で、スペシャリストになるよりもジェネラリストになる道を選択し、就職先で仕事を身につけては職場を変えて、どんどん新しい仕事を学んでいったそうです。そして、後年その知識を、自分の会社を立ち上げて運営していくのに役立てていったということです。

そのように、仕事をする目的を、お金のためでなく、自分が仕事の技能を学ぶためという点に焦点をあてる必要があります。会社のために働くというのではなく、最高の仕事ができる人間になるために働くというわけです。

このように、一生懸命働いて収入を増やし、貯蓄の速度を高めることができます。投資に先立って貯金を増やすには、働くことが欠かせないし、投資を始めたあとでもやはり、一生懸命働き続けることは、収入を安定させる上で必要なことだと思います。そしてさらに、十分で有り余るほどの収入になったら、その職業を道楽にできるというから、一生懸命働くことに賭けることは、ほぼ間違いなく当たりを得るくじのようなものです。


引用・参考図書