スラスラ言えるようにすること


暗誦をするとき、その前段階として、すらすら言えるようにしなければならない。これは、暗誦の絶対条件だ。しかし、どうしたらスラスラ言えるようになるのかが分からない人も多いだろう。スラスラ言えるようになるためには、次のような段階を踏む必要があると思う。

まず、そのテキストのおおまかな意味と構造を理解する必要がある。この場合、部分的にはっきりしない部分が残っていてもいいし、分かってはいても音読すると意味が頭に入らないという状態でもかまわない。要は、おおまかが分かっていることだ。

そのためには、教材の日本語訳を見る。訳は、必ずしも日本語である必要はない。自分の理解できる言語に訳されているものならば、かまわない。それも、完璧にニュアンスまで理解できるほどでなくてもかまわない。要は、そのおおまかが理解できればいいのだ。時には、書き写すことによって綴り字を押さえておく必要もあるだろう。

そして、音読を始める。10回と言わず、50回でも100回でも繰り返し音読する。そのとき、もし録音教材があるなら、それに合わせて音読する。全く同じイントネーションで言えることを目標に、繰り返す。カセットテープよりも、CDやMDなどの方が、この場合は有利だ。音声教材は、そのイントネーションや声の調子などで、文の意味が理解しやすくなる。それがたとえ棒読みに近いものであっても、理解は助けられる。プロが録音したものなら、もっと深い理解ができるだろう。

実はこの音読の回数は、外国語によって異なる。よく慣れた外国語なら、50回も音読する前に、暗誦できてしまうだろう。しかし、あまり慣れていない外国語は、50回音読しても、内容が頭に入らないために、スラスラ読むことすらできない。暗誦しようとするテキストの長さによっても、スラスラ言えるようになるまでの回数は違ってくる。しかし言えることは、どんなに困難に思われる外国語でも、100回も音読すれば、意味を理解しながらスラスラと言えるようになるということだ。たとえ才能はなくても、根気さえあれば、この難関は必ず突破できる。(これはレベルに合わせての話で、ギリシャ語のアルファベットを習い終わるや否や新約聖書の原典に取りかかるようなのは、得策とは言えない。ほとんど何も理解できないから、スラスラ読みようもない。)

そして、滑らかに音読できるようになったら、それぞれの意味を生かして──つまり、感情を込めて──読むようにする。この“感情を込める”ということが、テキストの理解を大いに促進し、その分暗誦を容易にする。

俳優が舞台で演じる練習をするように、臨場感のある読み方をする。しっくりいかないところは、しっくりいくまでやり直す。やってみると、なかなか臨場感が出てこないかも知れない。しかし、この臨場感を出す読み方の練習は、その意味の解釈を音読に含ませる練習なので、ぜひともすべきことだ。もし手本になる音声教材が、本物のプロの朗読だったり、映画やラジオ劇のシーンをそのまま録音したものだったら、それとそっくりに言えるようにすることで、解釈を朗読に含ませる練習を同時に行うことができる。

B5のレポート用紙に書き写して1枚ほどのテキストでも、そうやってうまく言えるようになるまでには、長い時間がかかることだろう。毎日1〜2時間ぐらいずつ練習したとして、分かりやすいもので2日、少し難しいものだったら1週間近くかかるかも知れない。しかし、そこまで行けば、暗記は容易だ。完全にスラスラ言えるようになったあとなら、暗誦は1日もあればできるだろう。