視訳法


暗記が苦手だという人には、訳付きの短い例文を覚えていくとき、次のような方法をお勧めする。

  1. まず日本語訳を1度音読してから、丹念に読む。日本語だからといって侮れない。どのような構造になっているのかをじっくり分析する。
  2. 英文を1度音読してから、その構造を分析し、日本語のどの部分とどのように対応しているのかを見比べる。特に概念の把握がしにくい語がある場合は、辞書を引いて調べる。そして、また2〜3度音読する。
  3. また日本語訳を吟味しながら1度音読する。
  4. それからまた英文の方をじっくり見ながら3〜4度音読する。普通のやさしい文なら4度でなく3度で十分だと思う。
  5. それからまた日本語訳の意味をを吟味しながら1度音読する。
  6. 今度は、日本語訳を見たまま英語で3度言ってみる。自信がないときは、英文を時々見てもいい。しかし、基本的には見ない。
  7. そしてまた、日本語を見たまま、その日本文を1度音読する。
  8. それからまた、日本語を見たまま、英語を3度言ってみる。
  9. 最後に一度英文をちらりと見て、終わり。次の例文に移る。

大体これで、一応暗記できる。もしできないときは、3.と4.をもう1〜2度繰り返す。それでもうまくいかないときは、もう一度丹念に日本語と英語とを見比べ、どのように対応しているのかを調べる。私たちは案外日本語を見ているようでよく見ていないのだ。日本語の研究者になったつもりで、日本語をよく調べ、それと英語とを対比させて注意深く調べる必要がある。構造上の問題だけでなく、時制なども、日本語の「〜ている」形が英語では“Have been 〜”という形と対応していることがある。「〜(する)には」などの対応も面白い。そういう点に目を付けてもう一度じっくり読み込めば、5.、6.に移ることができるだろう。

文が少し長かったり複雑だったりして覚えにくいときは、7.、8.をもう少し繰り返す。しかし、あまり神経質にならない方がいい。適当に切り上げて次の例文に移らないと、途中でいやになってしまう。

この方法を、とりあえず「視訳法」と呼んでおこう。日本語を、見ながら、英語に訳すからだ。この方法では、見るということを大切にしている。

3度英語を読んだり言ったりするたびに日本語を1度読むのは、その“意味”に立ち返るためだ。意味の把握が大切だ。日本語を見ながら英語を言っていても、ぼんやりして意味をあまり考えなくなる可能性がある。そこで、日本語を声に出して言うことによって、意味を覚醒させる。

こうやって覚えれば、暗記はそれほど難しくない。あとは時間をおいて記憶を確認し、後に書き出せばいいのだ。

ちなみに、一日に何例覚えるのがいいか。種田輝豊氏は、高校生の頃『英作文の修業』という本の暗唱用例文を覚えるのに、1日25例ずつ覚えたということだ。私たちもその程度にした方がいいと思う。私たちも、1日に20〜30例ぐらいを覚えるのが適当ではないかと思う。

また、全部で何例の例文を覚えたらいいのかということが問題になる。これについても、種田輝豊氏は、500の例文を暗記すれば、自分が言いたいことは言えるようになると言っている。その500の例文は、自分が勉強している学習書から取った方がいいという。

もちろん、暗記する量は、無理に500例にとどめる必要はない。それ以上覚えてもいいし、いくつ覚えてもいいわけだ。

ただし、この学習は、一通り終われば完全に終わったのではなく、その後何度か復習をして記憶を完全なものにする必要がある。こればかりはいっぺんにできないことなので、日にちをおいて繰り返す必要がある。このように反復学習すると、これらの例文が壊れたレコードのように頭の中に響きつづけるそうだ。