MDプレーヤーを語学学習に使う


外国語学習に、音声教材は不可欠だ。その音声教材は、ここ数十年間の間に、大きな発展を遂げてきた。

昔は、録音・再生する装置がなかったから、直接人が話すのを聞くよりほかなかった。教室で、先生の発音を聞くのが、すべてだった。ラジオで外国人の話す外国語を聞くことはできただろうが、その音声を保存する装置はなかった。この時期は、生の外国語を聞くことが、外国語の発音に触れられる唯一の条件だった。

その後、レコードが現れた。今から40年くらい前には、ソノシートとオープンリールテープが語学学習の先端兵器だったようだ。録音された音声教材の登場だ。これで、気兼ねすることなく、レコードが擦り切れるまで、何度も繰り替えし聞くことができるようになった。オープンリールテープも、何度も聞いていると、だんだんテープがのびてくるそうだが、それでも、先生から直接発音を聞かせてもらうのにくらべたら、ずっと気軽に、時間も気にせず、場所も自宅で勉強できるようになった。それだけではない。外国人にほとんどお目にかかれないような田舎でも、電気さえ通っていれば、正しい発音で外国語学習ができるようになったのだ。これは、革命的な発展だった。『20ヵ国語ペラペラ』には、当時のメディアによる外国語学習法が紹介されている。

そののち、レコードは次第に廃れ、音質のよくなったカセットテープが主流を占めるようになる。しかも、カセットテープレコーダーは津々浦々の家庭に普及しており、テープ自体も安く手に入るようになっていた。ダブルカセットもあり、市販の語学テープを編集して、反復して聞く必要のある会話本文などの部分だけを聞くということも、気楽にできるようになっていた。音声教材の大衆化だ。私が韓国語を勉強したのは、そのような時期で、テープレコーダーがなかったら、私はまともな発音で韓国語を身につけることができなかっただろう。韓国人留学生の知り合いがたくさんいたとはいうものの、実際に発音の訓練をするのは、自宅でテープレコーダーと格闘していたからだ。

その後、CDで外国語を学習できるようになってきた。音声教材のデジタル化の始まりだ。CDの強みは、音質のよさと、反復聴取によって音質が低下しないという点だ。しかも、CDは、頭出しが容易にできる。これは、カセットテープではうまくできない部分だった。また、CDプレーヤーの多くは、何番めの曲を聞くかあらかじめプログラムを組めるようになっている。そして、それを反復して聞くことも可能だ。実は私は、CDによる外国語学習とは未だに縁がないのだが、CDの一般化によって外国語学習がさらに前進したことは、疑うまでもないことだ。

一方、カセットテープレコーダーの方では、ICを使用した反復機能を搭載したものが現れた。これは大変なすぐれもので、特に発音に完璧を期そうという志のある学習者にとって、大変な文明の利器となった。発音というのは、個々の音素を正確に言えれば完璧になるのではなく、文の流れの中で、実際には様々に変化する発音を使い分けなければならない。それは、短い文を区切って、数十回、数百回と繰り返し聞かなければ、よくつかめないものだ。さらに、それよりも大事な要素がある。それは、文のイントネーションとリズムだ。これを身につけるためには、数百回の反復練習が必要になる。私はICリピートの機能のある録音機で、韓国語の発音をブラッシュアップした。最初の日は、たった一文の練習に、1時間以上繰り返しても、ついに完璧な模倣をすることができなかった。わずかなイントネーションの違い、微妙で繊細な節回しのようなものなどが、どうしてもつかめなかったのだ。しかし、その練習を1ヶ月ほど続ける間に、私の韓国語の発音は、目に見えてよくなったらしい。韓国の人たちに、日本人ではないようだとほめられるようになった。正確な発音を身につけるためには、何度も繰り返し聞けばいいのではない。何度も繰り返し模倣し、模範の発音と違う部分を、徹底的に直していかなければならない。それは困難な作業だが、ICリピートは、その困難な作業をかなり楽にしてくれた。

そののち、コンピュータの発達により、CDはコンピュータでも聞けるようになった。これは、外国語学習をかなり容易にしてくれたに違いない。私もCDをコンピュータで聞く外国語学習をしてみたかったが、その当時私が関心のある外国語にはCDの教材がなかった。現在、韓国で作られた日本語の教材で、CDに録音したものを持っている。しかし、カバーを切り裂くのがもったいなくて(笑)、まだ聞いていない。

その後、私は経済的に苦しかったために、音声メディアに関心がなく、時代の流れに立ち後れてしまった。それで、いつからか出てきたのか分からないのだが、数年前からMDプレーヤーが現れた。最近になって、シャープの mt77 という機種を買うことができた。これもまた、語学学習の道具として、大変なすぐれものだ。テープ数本になる語学教材を、MD1枚に録音してしまうことができる。そして、それを編集して、不要な部分を切り捨てたり、頭出ししたい単位を区切ったりすることが、自由にできる。そして、その区切った部分を反復して聞いたり、文の切れ目で一時停止して繰り返し発音したりすることも容易だ。しかも、音質がとてもよく、反復聴取しても、音質が低下しない。

MDでは、ICリピートのように、任意の区間で何度も繰り返し聞くのには向いていない。あらかじめ区切っておいたファイルの中での繰り返しになる。その点は、MDがICリピートに劣る部分かもしれない。しかし、あらかじめ区切っておいたファイルを繰り返すという機能が、思わぬ効果をもたらしてくれた。それは、聞き取りの力を飛躍的に伸ばすということだ。私は今、MDを使って、中国語の勉強をしている。もともとテープに録音されていた教材を、MDにコピーし、編集して使っている。ナチュラルスピードで録音された教材は、ただその部分を聞いただけだと、聞き取れない部分がたくさんある。しかし、まず初めに、本を見ないで聞いたり、本を見ながら聞いたりを、1〜2回繰り返したあと、本を見ながら、息の切れ目で止めて繰り返し言い、少し慣れてきたら、今度は本を見ないで、繰り返し言うようにし、口が慣れるまで繰り返すと、そのあとは、本を見ないで聞いて、すべて理解できるようになる。これは、中国語というのは、聞き取れなくても、字を見れば大体話の内容が理解できるからかもしれないが、他の外国語でも、難易度の差こそあれ、MDが学習を楽にしてくれるという点では、同じに違いない。

MDのファイルを編集して、各部分で頭出しができるようにしたら、そのファイルの番号を、教材に書き込んでおくと便利だ。たとえば、15課の2番目の会話文に「#35」と記してあれば、35番目のファイルだとすぐ分かり、速やかに頭出しができる。ただし、ファイルをあまりに細分化しておくと、後ろの方では頭出しするのに何十回もボタンを押さなければならず、大変だ。また、一つのファイルは、一連の文の流れを持っていた方が、聞き取りの理解力を訓練するにはプラスになる。ファイルの区切りは適当にしておく必要がある。

MDのファイルは、出力にUSVポートさえ使える機種なら、コンピュータに音声ファイルとしてコピーできるそうだ。音声教材の可能性は、飛躍的に発展したといえる。残念ながら、この機能は、私の持っているMDプレーヤーにはない。しかし、今後はおそらく、ほとんどすべてのメディアがデジタルに統一され、コンピュータで自由に扱ったり加工したりできるようになるのだろう。

音声教材は、ネイティブスピーカーの発音への限りない接近と、聞き取り能力の培養に、効果がある。MDプレーヤーは、教材を受け身に使用するのではなく、能動的に、目的に合わせて教材を加工できる。それをうまく使えば、学習効果を上げることができる。聞き流しだけでなく、部分的な反復聴取、発音の反復模倣などが、楽に使い分けられるので、今まで難しいと思ってきた外国語上達の道も、これでかなり平坦になってきた。