1979   Re^3:マニキュア
2004/06/28 6:07:18  ijustat   (参照数 1)
これは 1977 [Re^2:マニキュア] への返信です

ショウコさま、こんにちは。

>イとユの他にも静音と濁音の問題ないですか。。。
>
>「ベット」か「ベッド」か?「ハンドバック」か「ハンドバッグ」か。
>私の祖母は「デパード」と全部濁音で発音してました。(笑)

私は「自転車」をついつい“じでんしゃ”と言ってしまいます。教室では言わないように気をつけているつもりですが、ついポロリと出てしまっているかもしれません。

これには小さいころの記憶があるのですが、まだ漢字を知らなかったころ、なぜあの大きいのが“デンシャ”で、あの小さいのを“ジデンシャ”と言うのか、考えたことがあります。私のそのときの結論は、“ジブン”で動かすから“ジデンシャ”というのだということでした。“シャ”は“ジドーシャ”とか“サンリンシャ”とか言いますから、「車」でしょう。でも、そうしたら、“デン”はどうなるのかという疑問が残るはずですが、そのときはそこまで考えませんでした。ちなみに当時、なぜ歩く人を“ホコーシャ”というのか不思議でした。車じゃないのに。今の韓国語は漢字をほとんど使いませんから、小学校に上がるころの私のような形態素分析をしている大人が、たくさんいるはずです。

あと、アボガドですが、30年ちかく前、日本で売られ始めたころは、“アボカド”と言っていました。これは英語からの発音だと思います。ところが、最近“アボガド”と言う人が多くなり、これは何たることかと思っていましたが、この単語について調べると、スペイン語で“アボガド”と言うんだそうですね。韓国語だったらそれでも“アボカド”と言い続けるでしょうが、日本語ではある特定の言語に権威をおくことをしないんだなあというのを、ここであらためて認識させられました。

あと、その逆の例で、バドミントンを私はずっとバトミントンと思っていました。実際、そう聞いていましたし。バドミントンがバトミントンになったいきさつも、気になるものです。

>以前日本語学校で勉強していたときに
>「日本語には元来Rで始まる音が無い」と聞いたことがあります。
>「ロシア」は明治の頃は「おろしゃ」と発音されていたと思います。
>でも今考えると、「ロウソク」って日本語ですよね。
>「らっぱ」も忍者の諜報活動をする人のことを表現することもありましたよね。
>確かにRで始まる音は少ないので、日本人は語頭に来るのが好きじゃなかったんでしょうかね。。。

このことは、大学1年生のとき、国語学概論の授業で習いました。助詞・助動詞・接尾辞を除いて、ら行で始まる単語に固有語(やまとことば)が一つもないと、授業中に先生が断言したので、そんなばかな、きっと例外があるはずだと思い、辞書でら行の単語を全部見ました。すると、その先生の言ったとおり、ら行で始まるのは、漢字語と外来語ばかりで、固有語はひとつもなかったのです。私はその先生を尊敬しました。(笑)

このように、「日本語には元来Rで始まる音が無い」とおっしゃるのは、正しいのです。でも、「ロシア」を「おろしゃ」と発音していたのは、たぶん別の問題だろうと思います。明治のころにはすでに、ら行で単語を始めるのは自然なことになっていましたから。ちなみに韓国語では、現在も語頭のRの音は不安定です。ラディオ(=ラジオ)をナディオと言ったり、字母で順付けをするとき、カ、ナ、タ、ラ…となるのですが(調音点の順になっているそうです)、このナとラがこんがらかるときがあります。ちなみに韓国語では、語尾や接尾辞を除き、Rで始まるのは外来語だけです。この点でも、韓国語は日本語とよく似ているといえます。

>中国の「青」は本来は「緑」の意味で、「緑」が日本の「青」だと聞いたことがあります。

「青」と「緑」については、日本語でも韓国語でも、もともと区別をしなかったようですが、当の中国語ではどうだったのかと思い、『古代漢語辞典』(商務印書館)で「青」を調べてみました。すると、まず「藍色」と出ていて、「又、深緑色」とあり、そして「又、青色之物」ともあります。この3番目のには困りました(笑)。でも、これを見てみれば、中国語でも「青」という字は、ブルーという意味にもグリーンという意味にも使っていたようです。そういえば、出藍の誉れなんてのもありますよね。

「緑」が「青」と本当に違う色をさすのかはよく分かりません。有名な詩に、「江(こう)はミドリにして鳥いよいよ白く」というのがありますが、あれはたしか、“緑”ではなくて“碧”でしたよね。

>また「好」が良いという意味なのは、少し中国語に接すると(私のようないい加減でも)分かります。

現代中国語では、「好きだ」というのは「喜歓」と言いますよね。「好」は「好ましい」というときの「好」に近いです。でも、この字を第4声で発音すると、「好む」という動詞になります。論語のほとんど冒頭の部分に、「其為人也孝弟、而好犯上者鮮矣」という言葉があって、その「好犯上」は“目上にはむかうのが好きだ”という意味になると思います。頻度からすれば非常に少ないと思いますが、“良い”ではなく“好む”という意味になることも、あるわけです。

>伝える人がいい加減でも、使ってる人の数が多ければ主流になってしまうんですね(笑)

そういうのって、たくさんありますよね。「ハングル語」っていうのは、最初聞いたとき、ほとんど驚愕に近いものを感じました。でも、ずいぶんたくさんの人が使っているようです。私はとてもいやで使えませんが、「ハングル語」という言葉を使う人が主流になったら、そっちが“正しい”ことばになりますよね。私が韓国語を始めたとき、普通は“朝鮮語”と言っていて、私が“韓国語”というと、朝鮮語とは別の言語かと考える人もいました。その中で一貫して“韓国語”という言葉を使っていたのですが、今は韓国語の方が主流になってしまい、“朝鮮語”というのは学者が言語学的な文脈で使うときにしか用いられない言葉になったようです。

また、カモミールという言葉も、何語を経由してきたのか定かでありません。もともとはギリシャ語のハモミーリ(現代ギリシャ語の発音です)から出発しているようですが、英語ではキャママイルで、フランス語の先生に聞いたらカモミーユ、ドイツに住んでいた人に聞いたらカモミーレンだとか。イタリア語かなと思ったら、カモミッラだとか。韓国語ではケモマイルと言っています。いちばん近いのはフランス語ですが、最後の部分がすごく違う(笑)。いったいカモミールはどこから来たのでしょう。

>日本語の主流は「マニキア」だと思います。書くときは「マニュキア」や「マニュキュア」でも発音は「マニキア」じゃないかな。。。(笑)

ああ、それは鋭い指摘ですね。「新宿」は“シンジク”と言っているし、「手術」も“シジュツ”または“シジツ”と言う人が多いです。そのせいか、高校生のころ、「日本史」ということばが、ある文脈の中ではどうしても「日本酒」と聞こえてしかたなかったことがあります。

>どの国からその言葉が輸入されたか、の他に、日本人にとっての発音のし易さ、好みもあるんじゃないでしょうかね。。。

そういうことを調べると、今まで気づかなかった日本語のいろいろな特徴が見えてくるでしょうね。とても面白そうです。