1917   Re:やっぱり漢字に強い
2004/04/10 16:23:27  ijustat   (参照数 1)
これは 1915 [やっぱり漢字に強い] への返信です

氷雨さん、お久しぶりです。ijustatです。

>ある本で読んだものなんですけど
>漢字が表音文字より優れたところを指摘してました
>それはその語彙の正確な意味がわからなくてもその文字の組み合わせによって
>類推できるのです.
>
>たとえば”血”を知ってるとすると
>血液、血清、白血病、赤血球 などの用語は
>医学関連の仕事に携わってなくてもその意味がわかります
>けど英語の場合それに該当する用語を一々覚えなくてはなりません.

これは面白い指摘ですね。誰か(たしか鈴木孝夫<すずき・たかお>)が指摘していましたけど、英語の学術用語とドイツ語の学術用語とを、日本語の学術用語と比較して、その分かりやすさに差があるというのです。

記憶が定かではありませんが、英語の学術用語は、ほとんどがギリシャ語とラテン語が用いられていて、日常的な言葉しか知らないと、理解できないそうです。それとは逆に、ドイツ語では、学術用語にも日常語を使うので、日常的な言葉を知っていれば、学術用語もそれからの類推で理解できるのだそうです。

一方、日本語の学術用語ですが、これは、氷雨さんが指摘された医学用語を見ても分かるように、漢語が中心になっています。そしてそれらの単語は、日常語とは全くかけ離れたものが多いので、専門性の高い単語は、耳で聞いたら理解しにくい場合がよくあります。これは、英語の場合と似ています。

ところが、それらの難解な語句を構成する漢字は、日常語でも用いられているものが大部分です。“血清”がちょっと難しいとはいえ、やはり“血”に関係する単語だと分かるし、文脈を見れば、人体に必要な要素を意味しているらしいということがわかります。実はこの部分が、ドイツ語の場合と似ているのだそうです。

だから、氷雨さんの指摘は、言語生活において、とても重要な部分を突いています。漢字は身に付けるまでが大変かもしれないけれど、いったん身に付けたあとは、それによる便利な文字生活が可能になります。その部分において、漢字のような表意文字は、表音文字とは違った便利さがあります。

考えてみれば、韓国語は表音文字だけれども、ある程度の“表意”性を持たせているのではないかと思います。たとえば、“花”を意味する“コッ”だとか、“服”の“オッ”、存在を表す“イッタ”の語幹“イッ”などは、私には表意文字に見えます。つまり、その文字を見ると、その形が表す意味だけが思い浮かぶのです。そういう一種の表意文字化した文字列に支えられて、韓国語の読解が楽になっているのだと思います。

そうやってまた英語を考えてみると、英単語の中でギリシャ語起源の単語は、表意性を持たせているのではないかという気がします。たとえば、“ph”を“f”と読んだり、“ch”を“k”と読んだりするのは、その単語がギリシャ語であることを示す印になると思います(例外もありますけど)。日本語を読みながら、漢字が出てくると、それを日本語というよりは漢字として一つ一つの文字を理解することができますが、英文の中にギリシャ語が出てくると、ギリシャ語としてその単語を理解することができます。そうすると、漢字語を分解できるように、ギリシャ語の単語として分解できるようになります。

ギリシャ語が少し分かるようになっただけで、英語の単語の多くが楽になります。東後勝明<とうご・かつあき>が、“rhododendron”という単語がどうしても覚えられなくて、メモして机に貼ったと書いていますが、この単語は“rhodo(=薔薇)”と“dendron(=樹)”とに分解できるなと思いました。それが結局どんな植物なのかは分かりませんが(今辞書で調べると、シャクナゲの一種だとか)、とにかくギリシャ語からの類推で、その語形の意味は理解できるわけです。(もっとも、ギリシャ語を覚えるときに、英語で覚えたギリシャ語の単語が役に立つ方が、今のところは多いです^^;)

これでもしラテン語ができれば、英語の理解はもっと楽になるのではないかと思います。野口悠紀雄<のぐち・ゆきお>が、学生のころ“resilient”という単語がなかなか覚えられなかったと言っていましたが、これは辞書によると、もともとラテン語だそうで、ラテン語を知らない私には、さっきの花の名前とは打って変わって、印象の薄い語形に見えます。ラテン語の辞書を引いてみると(できないのに辞書は持っているんです)、その語源になっている“resilio”は、“to leap back, spring back”という解釈がついています。それを知っている人なら、野口悠紀雄にとって“鬼門”のような単語でも、すんなりと理解できるでしょう。

日本人が韓国語を勉強するとき、漢字語はよく知っているし、漢文も少しは理解できるので、韓国語の学習は、特に水準が高くなればなるほど、理解しやすくなります。だから、ほとんど問題ないのですが、日本語も漢字も知らない西洋人が韓国語を勉強するときは、その点で日本人にかなり遅れを取ります。

一方、英語の学習を考えてみると、私たちはギリシャ語とラテン語を知らないために、他の西洋人に後れをとっていることが多いはずです。だから、英語を極めたい人は、英語一筋と言わずに、ギリシャ語とラテン語も学んだ方がいいのではないかと思います。まあ、古典語で学んだ方がいいのでしょうが、現代ギリシャ語と、現代のラテン語であるイタリア語・スペイン語・ポルトガル語・フランス語のうちどれかを学べば、比較的やさしい文法で身に付けられ、英語の理解を助ける語彙も手に入ると思います。そうすれば、英語の中の漢字(?)も見えてくるのではないでしょうか。

というようなことを、ちょっと取り留めなく考えてみました。(笑)