上手な発音


ライコスクラブに書き込んだものを転載しました。
901   Re^2:もし私が日本で韓国語の教師になったら???
2002/01/27 23:13:39  ijustat   (参照数 0)

これは 887 [Re:もし私が日本で韓国語の教師になったら??? ] への返信です

こんにちは、aisya96さん、ijustatです。

>聴き取れないと発音もできない。そのとおりですね。私など、濃音の発音はいくら聞いても平音と区別できませんし…。
>聞いたところでは韓国語は世界でも有数の発音の複雑な言語でハングルで表せる音節の種類は1万以上(実際に計算したことはありませんが)という話も聞いたことがあります。以前、韓国に行ったとき、店等で先方の言っていること(大体見当はつきますから)はわかるのですが、こちらからはさっぱり通じない様子で、最初のうちは韓国では外国人が韓国語を話すのは歓迎されないのかな、とも思ったくらいです(ああ、恥ずかしい)。
>本当に難しいですよ。

今、ハングルを特別なソフトなしにSHIFT-JIS環境で入力するためのコード表を作っていますが、推定11,172字になります。時間の合間に手作業でやっているので、いつ終わるか分らない作業ですね。でも、その大部分は使い道のない文字です。音節としても存在するかどうか分りません。ウィンドウズでは全部表示されますが、マックでは実際に使うものしか表示されません。

音節の数は、『標準韓国語発音大辞典』(韓国放送公社、語文閣、ソウル、1993年)によると、1454種類あるそうです。

ところで発音ですが、私の妻は韓国語の個々の発音はかなり悪いのですが、全体としては非常に自然で、韓国の人たちが妻を日本生まれだと気付かないことがあるくらいです。これは、この前指摘したように、ゆどうふさんの指摘される用語でプロソディと呼ばれるかぶせ音素を正確に発音しているためです。このプロソディの重要性は、音声学者の土岐哲先生が主張していて、荒竹出版社の「発音・聴解」という本で、それに触れることができます。私は初めこの教材を見たとき「何じゃこりゃ」と思いましたが、実際に使ってみて、学生の発音がみるみる良くなったのでとても驚いたことがあります。私は今でもその教材の基礎になる理論がよく分からないのですが、それを理解できない私を尻目に、学生たちはその教材で日本語の発音をぐんぐん向上させていっています。

>その点、発音の簡単(音節の種類は100いくつしかありません)な日本語は、かなり下手な外国人の発音でも意思疎通ができないということはあまりないみたいですね。

日本語の音節数はいくつなんでしょうね。母音を5つ取りうる子音は「あ、か、が、さ、ざ(づぁ)、しゃ、じゃ、た、だ、つぁ、ちゃ、じゃ(ぢゃ)、な、は、ば、ぱ、ま、ら」の18個、母音を4つ取りうる子音は「や、わ、きゃ、ぎゃ、くゎ、ぐゎ、にゃ、ふぁ、ひゃ、びゃ、ぴゃ、みゃ、りゃ」の13個。それに短母音が5つ、長母音が5つ、他に「あい、えい、うい、おい」があって、それぞれすべてに「ん」と促音が付く。そうすると、合計1856種類の音節があることになります。

韓国語は音素の数が多く、それが規則的に音節を組み合わせている分、同じ音素の異音が少ないです。日本語は、同じ音素が環境によってかなり多様に変化するので、かえって実際の発音は難しいといえます。ただし、その多くは韓国語と類似しているので、韓国人が困難を感じる部分はごく限られています。

日本語で外国人がうまく意思疎通をしているのは、日本語の発音が簡単だからではなく、西洋の人たちは音声教育を中心に日本語を勉強するからです。韓国人がうまく発音しているように聞こえるのは、日本語に似た音声要素が多いからで、「ん」の音の次に母音やハ行音が来たり、促音があったりなかったりする音では、日本人に通じない発音をする人がときどきいます。しかし、日本に行って自分の発音の現実に気付き、日本人の発音を真似しはじめる人がよくいます。一般に韓国では、日本に行ったことのない日本語学習者は、自分の日本語の発音がいいと思う傾向があり、日本で生活した人は、自分の日本語の発音に問題があると思っている人が多いです。

日本人が不思議なのは(私もそうでしたが)、自分の発音に問題があるだろうという前提(これは正しい前提です)を持っているけれども、自分は外国語の発音ができないという前提も持っていることです。これは、日本語の発音がその外国語の発音と近いか遠いかに関わらず、意思疎通に問題無い発音ができるようになるという事実と、完璧な発音になるのはいずれにしても困難だ(しかし不可能というわけではない)という事実を無視しているのです。まあ、人間は得体の知れないものに恐怖を感じるものですが、韓国語の勉強で、その得体の知れない(?)発音という対象に挑戦してみるのもおもしろいかもしれません。

私の意見では、一つ一つの発音も大事だけれど、全体の流れであるプロソディに気を使うべきです。どんなに個々の発音を一生懸命練習しても、滑らかで通じやすい発音にはなりません。韓国で韓国に住む日本人に会うと、たいていの人たちは、韓国人に通じる発音の要領を身につけていて、個々の発音は日本式でも、一緒に韓国語で話しながら特に問題を感じることがありません。しかし、日本で韓国語を学び、韓国人に会ったこともない人は、どうなのでしょうね。

氷雨さんもいうように、「外国語は学問ではなくて真似する」ものです。真似から始まります。会話の授業で日本語を“学問”しようとしている学生は、伸びません。ただし、言葉は真似だけで終るのではなく、目的に合わせて使いこなすものです。だから、もっと適切にいえば、「外国語は学問ではなくてスポーツ」です。私が、外国語は学問ではなくスポーツだと言うと、学問派の学生は、びっくりします。でも、外国語の学習に“訓練(practice)”という言葉を使います。これは、言語の使用がスポーツと類似しているからです。スポーツの訓練は、基本的な動作、知識、場面場面でのテクニック、瞬発力が必要ですが、外国語の学習も、そういうものです。

特に正しい発音というのは、才能も必要かも知れないけれども、主にそれは、訓練の賜物です。何度も真似て、そっくりなリズム、即りな抑揚になるように勉強しつづければ、かならず正確な発音ができるようになると信じて頑張ってください。真似の効用については、こちらを参考にしてください。きっと役に立つ情報があると思います。

ijustat