中国人の外国語学習法


昔テレビで見たのだが、シャンハイのある公園で、外国語会話を勉強する人たちの集まる場所があって、その中に日本語会話をする人たちの集まりがあった。その中の一人がインタビューに応じたが、驚いたのは、その人の日本語が完璧だったということだ。中国人っぽい響きはあるのだが、アクセントまでも正確な標準語を駆使していたのだ。

その後だいぶたって、去年から中国語の先生たちと同じ講師室を使っているが、中国人の先生たちは、非常に流暢な韓国語を話す。一人はもう辞められたが、その先生は、日本語も大変流暢だった。今いる先生は、韓国に来て4年ほどだとのことだが、どんな話でも韓国語でできる。日常的な話題から、社会問題、歴史などにわたって、どんな内容の話でも韓国語で楽しめるのだ。

今日また、中国のハルビンから来た留学生に会った。その留学生は、ヨンセ大学の大学院で韓国語学を専攻している。韓国に来てから2年、その前に中国の大学で韓国語を専攻したという。韓国語学習歴は通算6年になるわけだ。その人も、まるで韓国人のように自然な韓国語でいろいろな話題を楽しんでいた。

そのとき、以前から疑問だった、中国人の外国語上達の秘訣について知りたくなり、質問した。中国語は日本語や韓国語と構造がとても違うので、自然な言葉をあやつるのは大変難しい。現に、同じ中国人でも、日本語が下手な人は本当に下手だ。全然聞き取れないくらいひどい日本語を話す人もいる。それなのに、また一方で、韓国人よりも正しい日本語を話し、日本人よりも上手な韓国語を話す中国人も目につく。中国ではいったい外国語をどうやって教えているのか。

彼女の話によると、中国ではテキストを丸暗記させられるのだが、ふつう朝5時に起きて暗誦するという。また、外国語を覚えるときには、中国語との比較をしない。そのまま受け入れる。自分が中国人であるということを忘れて、その外国語の物の考え方を受け入れ、自分のものにする。そして、その言葉を母語とする人のところへ行って、自分の外国語の間違いを直してもらうそうだ。ひたすら理解して受け入れ、覚えて使うことに力を注ぐわけだ。

この学習の手本は、カール・マルクスの外国語学習の逸話にあるらしい。日本や韓国では話題にのぼらないが、社会主義国ならではの話だ。英語の教科書で覚えたというマルクスのその話を、英語で暗誦して聞かせてくれた。日本では外国語学習の手本といえば、シュリーマンだが、中国ではマルクスらしい。しかし、私はシュリーマンの外国語学習法を暗誦まではできない。そういえば、韓国では外国語学習の手本になる有名人はいないようだ。

朝5時に起きて暗誦すると聞いて、昔のことを思い出した。中学校3年生の2学期頃から試験の日まで、朝5時に起きて7時まで2時間勉強したのち、朝食をとって学校へ行っていたことがあった。そのとき、成績がぐんぐん伸びて、3学期の最後の模擬試験では、学年で2〜3位にまでなった。その2時間に何を勉強していたのか今では思い出せないが、1日2時間の基礎的勉強で、中学生にしては大変な進み具合を体験したわけだ。

当時私が学校以外で学習していたのは、大学生の家庭教師から数学と英語を教わっていたのと、英語の補習をやっていた塾に通っていたのと、「ほくしん」という埼玉県の中学生なら誰でもやっている通信教育を受けていたことだけだったと思う。そのくらいは同級生たちもやっていたし、もっとたくさんの勉強をしていたはずだから、私の成績が急成長したわけは、朝5時に起きて2時間勉強したということしか考えられない。

もう一つ理由があるとすれば、そうやって2時間勉強した後、家を出るまで、テレビやラジオを遠ざけたことかも知れない。朝からにぎやかな話声や歌声が聞こえると、一日中イライラするのだ。で、毎朝、両親を怒らせながらラジオを止めて、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番かシベリウスの交響曲第4番をかけていた。受験が近くなった頃は、ラフマニノフの3番ばかり聞いていた。これは、今考えると、早朝に勉強した内容を、新たな情報でかき消すことなく、頭に定着させる働きをしていたかも知れない。

残念ながら、その習慣は、受験勉強が終わるとともに終了した。実際、朝5時に起きるためには、中学生だと夜9時には寝なければならず、下の階で両親がテレビをつけていたり、こそこそ話していたりするだけで、寝付けなくなる。それはかなり大きなストレスだった。高校に入った後、私の生活リズムは大いに夜型になり、現在に至っている。

中国の学習熱心な人たちは、今でも朝5時に起きて一人で外国語教科書の暗誦をしているのだろう。私のようにぼけっとして集中力のない人間と違い、その中国人留学生は、たえずニコニコして楽しそうだが、頭の良さがその言葉の端々から伝わってくるようだった。自分もあんなふうになりたいものだと思う。

勉強ができるようになりたい人は、朝5時に起きて、2時間勉強する習慣を、身につけてみては、いかが?